「友達…思いだなぁ」

「るっせぇてめぇなんざ、友達でも何でもねぇっ。敢えて言うなら悪友だ」



「それ…結局…友だち…ってことじゃん。
悪い友達と書いて…悪友…、やったね。


悪友に昇格した」



やっぱさ、


素っ気無くても、冷たくても、鬱陶しいとあしらってきても、やっぱり治樹は優しいよ。

本当は面倒見の良い奴なんだよな、弟がいるからかな?

俺も兄弟が欲しかったな。

治樹のことを慕う那智くんみたいに、可愛い弟が欲しかった。妹でもいいや。



ひとりぼっちじゃなかったらおれ、


こんなにもばかなこと…ぅ…ぉ…―――。




―――…。




だらんと垂れる腕と消えた荒呼吸、でもまだ頬を伝ってる優一の涙。

 
馬鹿だろ、てめぇ。

俺なんかに惚れるから、こんなことになっちまうんだよ。

死にたくないって言ってたくせに、俺のことを土壇場で気遣うから、こんなことになっちまうんだよ。


他人なんて理解できない。理解不能。不可解な生き物。



と、高校時代のふとした場面が甦ってくる。

あれは昼休み始まって、すぐの一こま。
まだ優一がハブられてる頃、しきりに俺と飯を食いたがりたいって纏わりついた。


『なあなあ、治樹。はーるき!
一緒に飯食って良い?

あ、サンキュ、んじゃこっちの机をくっ付けてっと』


『許可した覚え一つもっ、あ、てめ、くそ。面倒だな。余所で食え』

『同じ独り身ジャン。
さてと、一緒におててあわせてイタダキマス。ほら治樹も』

『しねぇ』


『ツンするなってー!』

『しねぇ』


『そんなんじゃ嫌われるぞ!』

『しねぇ』


笑顔で俺に笑いかけてくる優一を、いつもあしらっていた。一蹴していた。疎ましいと思っていた。


なのに、結局はあいつに負けていた。


それはなんでか?