「あじゃ…? はるき…らしくねぇ。デレてくれてる?」

「知るか」


フザけるな、俺は俺自身に叱咤したくなった。
優一相手にこんなことするなんざ、俺、イカれてるんじゃねえか?

フザけるなっ、フザけるなっ、フザけるなっ、那智に怒られちまうだろっ!


こいつを抱き締めてやるなんざ、怒られちまうっ、俺…浮気じゃねえかっ。



他人なんざどうでもいいじゃねえか!



なのに、なんで。





「それは…治樹が…、本当は凄く優しい…性格からだって」




口に出してたみたいで、優一は俺の疑問を解消するように答えてくれた。


優一は言う。

治樹は他人に素っ気無いし、思いやりにも欠けてるけど、欠如しているわけじゃない。
皆と同じように感情を持っている。


だけど弟に固執してるから他人に対する感情が不要だと思い込んで、その感情が眠っているのだと。


治樹は正常者にいつだってなれる。

異常者になろうとしているだけで、本当はいつだって…。



ずっと俺を見ていた自分が言うんだから間違いない。



笑う優一は最後の力を振り絞って、垂らしていた左の手を右手と同じように背中に回してくる。


「ごめん、最期だけひとりぼっち…しないで…な」

「フッザけるな…、なんでてめぇの、てめぇの我が儘に付き合ってやらないと」


いけねぇんだよ。

口は悪態、態度は抱擁、まったくもって説得力がねぇ。


そんな俺に、優一はデレてくれてると笑声。