小刻みに体を震わせながら肩口に顎を置いてくる、息遣いの荒い優一に目を向けた。
「いたいや」ポツリと言葉を零す優一は、掠れ声で俺に言う。
悪は滅びるものだと、正義は勝つものだと。
「治樹…、死んじゃったら…、那智くん…泣くだろ?
お兄ちゃん…、ヒーローだし…」
「てめぇ…、俺が欲しいって」
「えぇー…今…説明…しないといけないかなぁ…。チョー痛いん…だけど…おれ」
はぁっと息を吐く優一はナイフを持っていた右の手で俺の背中に回し、「ごめんごめん…」ポンポンと擦って謝ってきた。
欲しかったのは本当だし、満たされたかったのも本当、でも友達を傷付けたいわけじゃなかった。
咄嗟に見せた俺の表情に我に返った、優一は力なく笑う。
「俺ってさ…、馬鹿だから…、感情に染まりやすくて。
治樹、大切なのに…、欲求に堪えられなくて、自分の…欲望のまま動いて…。
傷付けること…、分かってるんだけど…、自制きかなくて。
きっと止めて欲しかったんだ…、治樹にさ。
こんな…狂気染みた俺を…、誰でもないひーろーに…」
止めて欲しかったんだよ、きっと。
本当はこんなことしたかったわけじゃないのにさ。
治樹の対等になりたかった、本当の友達になりたかった、ずっと一緒にいたかった。それだけだったのに。
孤独に支配された俺は間違った方向に突っ走って…、ダメだね、俺。
「ひとりぼっち…、なりたくなくて…、ごめん、治樹」
煩い、誰がてめぇなんて許すか。
てめぇはチンピラの一件で俺等を、那智を傷つけようとした挙句、俺の命を変態的な思考のもと、奪おうとしたじゃねえか。
許すか、許すかよ、許して堪るかよ…、そう言えない俺はへたれだ。
嗚呼、すっげぇ胸が痛い。
背中を撫でてくる手が、すげぇ痛い。痛いっつーんだ。
身動き一つ出来ない俺に、優一はそっと告げてくる。
治樹は異常者じゃないよって。
本当の異常者は自分みたいなことを言うのだと優一は一笑。
笑えない俺は呼吸を押し殺すだけ。



