や ば い 。
咄嗟に右手を背中に回して、ジーパンに挟んでいた拳銃を抜き取る。
安全レバーを下げて構えを取るけど扱い慣れてない、っつーか、初めて扱うブツに俺はコンマ単位で手こずった。
コンマ単位が命取りになった。
鋭利ある果物ナイフが俺の喉目掛けて…、死にたくないッ!
嫌だ嫌だ嫌だっ、那智を置いて死にたくなiッ!
那智っ…、戻って、那智とまたふたりぼっちで暮らs。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌dっ、那智那智那智那智那智那chiっ、こんなところで無様に死にたくn!
俺は照準も合わせず、無我夢中でトリガーを引いた。
パァン―!
風船が割れるような弾けた音。
鉄道橋の上では電車がケタタマしく通り過ぎ、相変わらず傍の川は静かに流れて、硝煙の匂いがほとりを仄かにほろ苦く取り巻く。
呼吸さえも忘れて瞠目する俺に対し、優一は目で微笑んできた。
俺に目掛けられる筈の果物ナイフは優一の左の腕にしっかりと食い込んで…、優一の腹部ちょい上鳩尾辺りが、まるで墨が落ちたかのようにじんわりと、体液で汚れていく。
相手は痛みに苦痛帯びながらも、
「お見事…」
しっかりと俺に綻んで、刹那、つんのめってくる。
奴は俺に凭れ掛かるように崩れてきた。
「…なん…で」
無様にも俺は体が震えていた。ついでに声も震えていた。
だって俺は確実に敗北を確証していた。
コンマ単位で俺がトリガーを引く前に、優一の凶器が俺の喉を裂く筈だったのに、優一は直前で方向転換。
自分の左の腕に凶器を刺して、俺に撃たれやがった。
自ら撃たれる選択をしやがった。



