意外と優一も喧嘩慣れしてやがるから、また厄介。
動きが嫌味かって思うくれぇ滑らかなんだよ。
だが死ぬわけにはいかないんだ、てめぇに俺をやるわけにはいかないんだよ。
俺のすべては那智のだ。
んでもって俺が消えたら那智が独りになっちまうだろうが!
あいつを独りにするわけにはいかねぇっ、死ぬまで俺と那智は一緒なんだから。
向かい合う形で相手の出方を窺う俺は、さっきから背中を気にしていた。
正しくは背中に隠しているこれをいつ出すか…。
これを用意してくれた鳥井に扱い方は教えてもらったが、あいつも実践したことはねぇって言うから若干説明に不安を覚えたし。
「あんま使うなよ。最終手段だ」なんて忠告してくるし。
だったら俺なんて実践どころか実物すら触ったことねぇ。
優一の言葉を借りるなら、こんなの持ってたら“銃刀法違反”で捕まる。だな。
今となっては尊属殺人罪で逮捕状が突きつけられてるから(まだ逮捕状は出てないかもしれねぇけど時間の問題だろ)、銃刀法違反なんて屁みたいなもんだけど。
ギラついた殺意を宿らせる眼を俺に向ける優一だけど、いつものように愛想良く、人懐っこく微笑んでくる。
その微笑が恐怖を煽って仕方が無い。
サッと身軽に駆けて、俺の懐に飛び込もうとする相手。
紙一重で避けた俺はスタンガンを持っている左手首に手刀を勢いよく落とす。
小手を狙われたら、普通相手本人の意思関係なしに握っているブツを落とすもんだ。
優一も例外じゃない。
スタンガンが重力に従って地面に叩きつけられる。
急いで俺はスタンガンを川に向かって蹴った。
同時に優一がナイフを持った右手で肘鉄砲。
横腹に食らって、俺は情けなく呻き声を上げた。
眉根を顰める間もなく、怯んだ俺の腹部を真正面から蹴ってくる。
勢い余って尻餅つく俺は本能の警鐘を聞いた。
今の俺は丸腰、優一に飛び掛られちまったら一巻の終わり。
命の危機に冷汗、脂汗、何汗。
顔を上げれば、笑顔のまま優一が俺の前に立っていた。
笑顔を貼り付けたまま、素早く持っているナイフを翳してくる。



