話はそんなところだと、優一はニッコリ。
折り畳んでいた果物ナイフを綺麗に直立、座り込んでいる俺に綻んでくる。
馬鹿な俺は他人の言葉に今、若干胸を痛めて同情心を抱いているらしい。
優一の昔話に一々過去の古傷が疼いている手前がいる。
今の優一の姿はある意味、ある意味…、俺だから。
那智が生まれなかったら、俺もこいつのように生きていたのかもしれねぇ。
しかし、これはいたく真面目な話、身の危険を感じる…な。
まだ体、やや痛みやら麻痺やら鈍いやら、だぞ。
チッ、さあてどうするか。
俺と似たり寄ったりな異常者くんを…、どうすりゃいい。
「だあいじょうぶ、俺はストーカーさんとは違う。
治樹の後は那智くんだから。
俺ってヤサシイから兄弟を引き離すような真似はしないよ。
ということで、治樹、美味しくイタダキマース!
カニバリズムかもしれないけど残さず治樹、食っちゃいます!
本当に食うか分かりませんが、取り敢えず貴方のスベテを貰いたいの!
「ヤな表現するんじゃねえっ、チッ!」
猪突猛進。
一点走り。
馬鹿な策士らしい行動に俺は盛大に舌を鳴らした。
悲鳴を上げかけている体に鞭を打って、その場から後退。
夜風と共に駆けてくる異常者は「おろ?」、まだ動けたのかと艶やかに微笑しながらサクッと地面にナイフを刺す。
すぐに抜いて後退した俺の足をロックオン。
足のリーチを活かして、足払いしてきやがった。
態勢を崩す俺は、どうにか片手を地面につけ、飛び掛ってくるって表現がお似合いの異常者の腹部を利き足で蹴り上げた。
優一は怯みを見せるけど、隙は見せず。
一度は崩れる体勢を立て直し、相手はナイフとは反対の手をパーカーのポケットに。
俺の体を麻痺させやがった凶器を空いた手で持ちやがった。
両手に花、両手に凶器、両手に危険、俺は大ピンチってところか。



