あははのは、で笑う優一は一旦果物ナイフを畳むと体ごと俺と向き合う。
無垢過ぎる笑みは那智に似ていた。
あいつも無垢な面があるから…、傍から見れば狂気染みて見えるんだろうな。
俺は那智を骨の髄から髪の毛の先まで愛しちまってるから、あいつの狂気を狂気とも思えないけど。
他人の優一は狂気そのもの。
少しでも下手な行動を起こせば殺されそうだ。
大変遺憾な事に俺は殺されてやる気なんてさらさら無いけどな。
「てめぇの目的は?」
慎重に、けど素っ気無く質問。
「言っただろ? 治樹が欲しいって」
目尻を下げて優一は破顔。
「治樹ってヒーローが欲しいんだ、俺」
いやさ、高村と手を組んだのは向こうから交渉があったんだ。
少し前から高村が治樹のことを狙っていたこと、俺、知ってたし、ストーカーだってのも見抜いてたし。
治樹は鈍ちゃんだから気付かなかっただろうけど、毎日のように見てたんだぞ、高村。
大学入学早々ずーっと、な。
気付かないって方がおかしいって思うくらい、高村は治樹を見てた。
一目惚れなのか、何か理由があって惚れたのかは知んないけどな。
俺、実はこっそりと治樹と高村の告白現場も見てた。
んで打ちひしがれている高村を見て、俺は如何にも好青年の素振りを見せながら、あいつに歩み寄ったんだ。
泣いている高村を見つけた好青年を見事に演じたよ。
「どうしたの? 大丈夫?」
なーんて甘い声を掛けながらさ。