「那智、他人の言うことなんざ信用するな。
陰口でも何でもそうだ。信用するな。気にするな。気に留めるな。
そっちに意識を向けるから傷付くんだ。
てめぇは兄さまにだけ信用を置けばいい。
那智、てめぇは兄さまと他人、どっちを信用するつもりだ?」
「勿論…、兄さまです…」
「じゃあ気にするな。
てめぇがどう呼ぼうが、俺は構わねぇよ。
傍にいてくりゃ、俺はそれでいい」
クシャリと弟の頭を撫でて、俺は視界に広がっている街並みを見つめる。
例えば、こうやって街中で野郎同士が兄弟同士が手を繋ぐ。
周囲からはホモだって思われるかもしれないし、別の意味で俺等の存在を区別してくるかもしれねぇ。
だけど俺は周囲にどう思われようとも構わなかった。
那智がいりゃなんだって良いって思えた。
ホモじゃねえけど、別に那智だったらいいかなー…って考える俺もいる。
抱きたいなんて思ったこともねぇし、勃ったこともねぇけどさ。
だって俺、那智と離れるなんて考えたこと無いし。
俺が就職しても、那智が高校を卒業しても、十年も、二十年も、三十年も、きっと俺の隣には那智がいるんだと思う。
そんな奴が結婚なんて無理だろ?
ましてや恋愛が出来るかどうかも…なあ? 他人なんて興味ねえし、持たねぇし、どーでもいいし。
…じゃあ、逆だったら?