「おっまたせ、治樹!」
「ちっとも待ってねぇから安心しろ」
いつもの会話を広げてみる。
あはっと笑う優一は、
「ツンデレなんだからぁ」
少しはデレてよと無茶な要求を突きつけてきやがった。
それで見逃してくれるなら幾らでもやってやりたいがな…、生憎てめぇの言う“デレ”は那智専用。
てめぇに対しては何とも思わねぇ。
寧ろ殺意。
まだ痛みに体が悲鳴を上げている俺は、どうにか硬い地面に尻を落として座り込む。
警戒心を最大限に高めながら、優一に視線を投げた。
「主犯にそんなことしてもいいのか?」
「ンー、一応これでも高村は利用の道具としか考えてなかったし」
「馬鹿が策士なことを発言する」
「やーだな。天才と言ってよ」
血で汚れた果物ナイフの刃を、自分のジーパンに擦り付ける優一。
「本当はさ」鋭利あるナイフを眺めて主犯は吐息
「治樹と那智くんがチンピラに襲われたところを、俺が助けてやる計画だったんだ。
んで高村はポイッ、終わり、になる筈だったのに。
残念だな…、二人を助けてヒーローになるつもりだったのに。
まあ、ヒーロー偽称ではあるけどさ。
俺、治樹のデレが見たかったんだ。
デレた治樹を見て満たしたかった」
「……。引いていいか? 変態かよ、てめぇは」
「治樹にはだけは言われたくないって。
那智くんとべろちゅーしてたそうじゃないか。
看護師さんから聞いたぞ。そんなにも弟ゾッコンになっちゃって。
ま、それも治樹らしいけどさ!」