「さっすが、ツンデレ治樹!」
下川治樹の高校時代からの級友、佐藤優一は彼の後ろで笑声を漏らした。
恍惚に視線を投げてはいるが、態度は黒光りな無機質殺傷道具を突きつける、と物騒極まりない。
此処に警察が飛び込んできたら、優一は間違いなく銃刀法違反で捕まるだろう。
まあ、突きつけているソレが本物かどうか怪しいところではあるが、少なくとも治樹の脅しにはなっているようだ。
動く素振り、抵抗する素振りは僅少も見せない。
友に共犯だと暴かれても、優一は余裕綽々に笑みを浮かべていた。
発言に注目されていたなんてウッカリしていた、頭が良い奴は目を置くところが違うな、純なる褒めに治樹は肩を竦める。
「優一、てめぇだろ? 俺のお冷に仕込ませてやがったのは」
「ポンピン! 治樹のお冷に仕込ませて貰いましたです。
いたってシンプルなやり方ですが、配る時にこっそり…と」
「で、それだけじゃ後々怪しまれるからって、目を盗んで次々に全員分の飲みもんに仕込んだ。
ある時は運ばれてきたスープに。
ある時は食後出される珈琲に。
ある時はおかわりしようとするお冷に」
「探偵みたいだな、ツンデレ治樹!」
軽口なのは余裕の表れなのだろうか。
やけに優一のテンションは高かった。
傍で治樹は小さく溜息をついて、盲点だったとポツリ。
「俺の隣に座っていた馬鹿はやりっこねぇ。
てめぇのことを高校時代から知ってたもんだから、先入観が盲点になっちまった。
まさか馬鹿なてめぇが策士だったとはな。してやられた」
「おおっ、治樹に褒められた」
わぁい。子供のように無邪気にはしゃぐ優一に、「なんで高村と?」治樹が組んだ理由を問い掛ける。
曖昧に笑う優一は、これからどうする…、と彩加に疑問を投げた。



