(旧)ふたりぼっち兄弟【BL寄り】

今すぐにでも彼の体に抱きついて、その流れている血液ごと、命打っている鼓動ごと、それこそ匂いを感じたい! 此処で抱かれたい。

初が夜空の下、なんてロマンチックな性交光景!

嗚呼、でもダメ、まだ痴態を曝け出すには早い。
引っ込み思案な性格を装い、ニコっと彼に微笑みかける。

幸いなことに憎き弟がいないようだ。自然と零れた。


「わざわざ脅しのお手紙ありがとう。
来ないと、チンピラさんの一件を暴露されるって書いてあって驚いちゃった。

どうして私の家を知ってるのかな? 下川くんって不思議な人だね」


「身の危険が迫ってるのにそれ、か。それがてめぇの素か…。随分と歪んだ…、余裕な表情だな」


余裕? そんなことない!
貴方に会えるだけで、発狂しそう!

彩加は心中で絶叫を上げながらも、表向きでは笑顔を浮かべて見せた。

いつもなら引っ込み思案な面を全面的に見せるのだが、今はそんな余裕もない。

ニコニコッと笑みを浮かべて、「どうして呼び出しを?」しらばっくれてみせる。

治樹は呆れ顔を作りながらも、闇夜と同じジーパンのポケットに手を突っ込んで視線を逸らす。


「チンピラを雇ったのはてめぇだな? 俺等を襲わせて…、告白を一蹴した腹いせか?」


とんでもない、彩加は首を横に振った。


「チンピラさんをお金で雇ったのは当たり、半分正解。
だけど半分不正解。下川くんを傷付けるつもりは毛頭無かったよ。傷付けたかったのは別の人。貴方じゃない。

だって下川くんは、私の最愛人になるんだから!
なんで傷付けるの? その必要性なんて何処にもないよ!

私ね。下川くんのことなら、なあんだって知ってる。
どこの小中高校に通っていたのかも、両親に虐待されてたことも、今、どこに住んでいるのかも。

大学近くのパスタ屋がお気に入りなんだよね?
あ、でもそれは弟くんのお気に入りか。残念。下川くんがお気に入りなら私も好きになるのに。

さすがに行方不明になった時は気が気じゃなかった。
皆の前じゃ大人しい顔を作っていたけれど、毎日泣き崩れていたんだよ。

私の下川くん、何処に言っちゃったの? って。
駄目だよ下川くん、私の傍から離れちゃ。


だって下川くんは私のものなんだから」