だけれど、子供に向けている微笑を自分に変換。
次第次第にささくれ立っていた心が落ち着いて、胸に熱いものが満たされる。
体の芯が滾って、彼を求めていた。
嗚呼、欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい、彼が欲しい!
その優しいテノールで名前を呼んで抱き締めて求めて!
もう遠くから見るのはごめん。
もう子供に愛おしい彼を盗られるのはごめん。
もう距離感ができるなんてごめんのごめんのごめん。
でも現実は冷たい。
あんなに微笑んでくれていたのに、気持ちを伝えれば、素っ気無く一蹴。
違う、貴方はそんな人じゃない。
知っている、貴方は優しい微笑を持った人。
何度も何度も自分に微笑みをくれた人、容姿端麗で周りには冷たくて、でも自分だけ見てくれている。
そう、彼は自分のモノ。
彼をそうさせているのはだあれ?
―――…分かってる、彼の傍にいる子供なのだ!
子供が邪魔だ。
彼の弟であろうと邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔、アイの妨げ、自分達の障害物、汚らしい手で彼に触るなんて言語道断。
『兄さまは那智のことだけが好きだぞ』
嗚呼、悲しいことを言わないで!
彼は自分のことが好きなのに、悲しいことなん「時間通りに来てくれたようだな。高村彩加」
高村彩加。
それは紛れも無く自分の名。
愛おしい声に、体が震えた。恐怖からではなく、歓喜による感情から。
振り返れば、見事に金に髪を染めた愛しの彼。
入院している筈の彼は、綺麗に包帯を取っ払い、黒のワイシャツにジーパン、赤いネクタイを締めていて惚れ惚れする。



