「軽く入院させる程度の怪我でいいっつったよな?
期待以上の怪我負わせやがって。
俺はともかく、那智にまで加減しなかっただろうが。
傷になったらどうしてくれやがる。
あいつに傷を残していいのは俺だけだが?」
「ちょいちょいちょい待ちなっせ。
俺は何度も反対したし、加減できないっつっただろ?
なのに若旦那がやれっつーから、あんた等に睡眠薬を飲ませて入院させる程度の怪我を負わせた。
まあ、だーれにも疑われず入院もできただろ?
万々歳結果じゃないかよ。
寧ろ感謝してくれって。
おりゃあ、仕事以上の仕事をした」
忠義を尽くしたんだぜ、俺。
確かに鬼性格のアンタに、ちょーっち本気出したけど、でも命は取りゃしなかっただろ? 取れることもできたのに!
俺ってなんて健気な雇用人!
神さまだって俺を褒めてくれるにちげぇね!
両手をあげてアタフタ弁解してくる鳥井の頭を一発殴りつけて、俺は窓を開ける。
「ひでぇの」
鳥井は俺を鬼だと文句垂れた。
ついで、スポーツバッグを肩に掛けると俺の後を追う。
俺等の病室は三階。
足を滑らせて落ちれば、また病院送りだろうな。
夜風を感じながら、満月の空の下、俺は窓を乗り越えると壁伝いに歩いて、下二階の便所に移った。
故意的に窓は開いていた。
鳥井が前もって開けておいてくれたんだ。
俺等が此処のルートを伝って逃げると見越して。
一階まで下りると、受付口には向かわず、誰もいないことを確認して窓から外へ。
グルッと病院の輪郭線をなぞるようにまわって、俺等は駐車場に向かった。
那智が乗せられているであろう益田達の車を探した。
「あれだな」
鳥井がシルバー帯びた乗用車を見つけ、親指で指す。
急いでその車に駆け寄れば、助手席の扉が開いてゴムボールのように跳ねながら俺の体に抱き付いてくるガキ。



