コンコン―。
ノックをしてみても反応はない。
いつものことだ。起きていても兄弟は反応を返さない。
仕方がなしに扉を引いて病室に足を踏み入れてみる。
「那智か」兄は目を覚ましていた。
窓の外の景色を眺め、ぼんやりと欠伸を噛み締めている。
こちらを見てこないのは、当然のように弟が戻ってきたと思っているからだろう。
「那智、兄さま置いて、何処行ってたんだ?」
ダメじゃないか、傍にいなきゃ。
那智は俺のなんだから、絶対傍にいないといけねぇんだぞ。
治樹のうつらうつらとした言葉に、言い知れぬ胸の痛みを感じながら益田は「坊主」と話し掛ける。
弟ではない。じゃあ、誰だ、とばかりに治樹がゆっくりと首を捻って此方を見てくる。
「アンタか…、なんだ」
「坊主。ちとばかし話があるんだが。……那智くん、罪を認めたぞ」
その言葉に治樹は瞠目。
いや、まさかそんな、びっくらたまげている治樹と話すため、スツールに腰掛けた。
治樹はそんなことないと言い張る。
だって罪を認めたら那智は自分の傍にいられなくなるのだから!
そんなことないそんなことない、治樹は拒絶してみせる。
もうこの時点で、彼は態度で罪を暴露しているものなのだが…、哀れ、兄は気付いていない様子。



