「もしかして那智くん…、貴方が」
沈黙。
沈黙。
沈黙。
「うん」
また沈黙。
小さく頷いた那智は長い沈黙を作った後、それを裂くように「おれが殺したんです」白状した。
罪の重さに耐え切れなくなったのだろう。
お腹と背中に包丁を刺したのだと吐露。
骨折させたのは兄だけれど、包丁で母親を刺したのはまごうこと無き自分なのだと、那智は膝を抱えたまま伝えてくる。
「兄さま、悪くないんです…。なあにも…、おれが悪いんです。お母さん、恐くて怖くて、それで」
家に灯油を撒いて火を放った。証拠を隠滅させるために。
ブルブルと身を震わせ、殺したのは自分だと苦言。
「そうか」
益田は叱ることもなく、だからといって同情することもなく、珈琲を飲み干すと柴木に視線を投げる。
頷く柴木は、那智の肩に手を置き、詳しく話を聞かせてくれるかと頼む。
うん、頷く那智はこれでもう兄さまに嫌われちゃう。
涙声を漏らし、涙粒を落とし、涙を流した。
落ち着かせるように少年の頭を撫でた柴木は、取り敢えず自分は那智を病院の駐車場に連れて行くと告げた。
此処は話し難いだろう。
少しだけ病室を留守にする許可を医者に貰い、事情聴取をすると意見。
承諾した益田は、自分は兄のもとを尋ねてみると腰を上げた。
もしかしたら目を覚ましているかもしれない。
目を覚ましていたら、弟が事件のことを白状したと告げ、同じように事情聴取してみようと思う。
眠っていたら後日、事情聴取をしてみる。
そう言うと、益田は柴木に那智を預け、早足で廊下を歩き始めた。
(参ったなぁ。ああいうガキの涙見ると、こっちまでやられちまう。たまんねぇな)
不運な家庭環境に生まれちまったんだな、坊主達も。
同情心を抱かないようにはしつつも、殺人の動機が動機なために何ともいえない。
ふうっと息を吐き、益田は兄の待つ病室の前に立つ。



