従順な弟は良くも悪くも純粋。

悪いことをした、それをちゃんと認識させてやれば白状してくれると思う。

今は兄の言うことを聞いて、堅く口を閉ざしてしまっているが…、ほんと可哀想な兄弟だ。

兄も弟も、オトナや世間体から見放され、ついに歪んだ関係を作り上げてしまった

作り上げなければ自分達が崩れてしまう、それを知っていたから。

自分に子供がいる。

長男と長女の二子…、子を持っている親だからこそ、ああいうコドモ達は放っておけないのだ。


親にオトナに愛情を貰えなかった兄弟(コドモ達)、益田は憐れみの念を抱いた。

これを部下に吐露すれば、

「更生させてやりたいですね」

柴木も憐情を含む台詞を吐く。

同意見だった。
まだ間に合う、兄弟はやり直せるチャンスがある。

益田は祈った。
自分達が罪を暴く前に、自分から罪を告解して欲しい。と。





「さあてと、今、兄弟は何をしてるんだか」



日常の一部になりつつある病院の訪問。

時刻は午後八時を過ぎていた。
 
益田は柴木と共に、受付を通り過ぎると休憩所へ。
まずはそこで珈琲を頂くのだ。

入院患者や見舞い客で小さく賑わっている休憩所に足を運ぶ、と、カップ自販機の前で物欲しそうに商品を見つめている少年がひとり。


頭に包帯を巻いている少年は兄弟の片割れ、下川那智だった。

珍しい。
兄と一緒ではないのだろうか。


「うー…」カップを見つめる少年に、「よっ」益田が気さくに声を掛けた。

やや驚く素振りを見せる那智だが、どうもと会釈してくる。


「こん…ばん…は…」

「こんばんは、お兄さんは一緒?」


ううん、那智は首を横に振った。

兄は病室で眠っているという。