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「軌道に乗ってきた、ところがどっこい最後の最後で逮捕する証拠もんがねぇ。冗談じゃねえなぁ」


 
益田は苛立ちを覚えていた。

兄弟が犯人だという可能性は、捜査をすればするほど、現場を掘れば掘るほど、わんさか出てくるというのに。

肝心の証拠が見つからないのでは話にならない。

まるで決定的な証拠を誰かに揉み消されているように、物的証拠が見つからない。


いい加減、兄弟が犯人だという徹底的な証拠を見つけなければ彼等が退院してしまう。

彼等の頭の包帯が明日には取れると医者が告げてきたのだ。

これ以上、入院は長引かせられない。
病院に拘束することも厳しいだろう。


結局彼等が犯人である可能性で終わり、事件は迷宮入りのまま。

捜査も事件もすべておじゃんである。


あと可能性として捕まえる事ができるのは…、容疑者である彼等が出頭、して来てくれればいいのだが。


いやはや、あの様子だと難しいだろう。

兄弟は依存し合っているのだから。

弟を束縛している兄、兄だけに従順な弟、両者、離れる気配が無い。

部下に兄弟を見張らせてはいるが、動きも無ければ何も無い。
あるとすれば兄弟のいっちゃーでらっぶいシーン云々。

同性としてキツイものがある報告を多々受ける。

見張ってくれている部下は異性だが、彼女もまた色んな意味で辛そうだ。


兄は曲者、どうあってもこちらを手玉に取ることはできないだろう。


となれば…鍵を握ってるのは弟。
弟さえ、物にすることができたら。