避ける―…?
理解する前にゴンッ、後頭部に衝撃が走る。
「いってぇ」
俺は頭部を押さえた。付近に鞄が転がる。
教科書が入ってるであろう鞄は重量感たっぷり、こんなんが頭にぶつかってきてみろ。
痛みも半端ねぇぞ。
痛みに呻く俺を、
「ザマーミロ!」
鼻高々に笑う女が一匹。ナナシ女だ。
どうやら俺の後を追い駆けて来たらしい。
鞄をぶつけてきたのもこの女。
地面に転がる鞄を拾って俺を鼻で笑いやがる。
他人に無頓着な俺でも、今のはさすがに頭にくる。
「暴力女が」
俺はめいっぱい悪態を付いてやった。
舌を出すナナシ女は当然の報いだとシニカルに笑った。
どんだけてめぇのダチに謝らせたいんだよ。
ただフッただけで…、ワッケわかんねぇ。
「てめぇ、こんなところまで追って来やがってっ、迷惑なんだよ。消えろ」
「あんたが彩加に謝るまで追い駆け続けるわよ! おたんこなす!」
「チッ、しつけぇナナシ女だ」
「うっさいわよ、サイテー男!」
正義感溢れた女だな、マジで苛々する。
女はいつもこうだ。男以上にダチのために自ら動いて行動を起こす。
分からない、なんで他人のためにこうも動くのかが。
ナナシ女に睨みを飛ばしてると、後ろから服の裾を掴まれた。
「兄さま」
喧嘩してるんですか…、不安を宿した声で俺を呼んでくる弟に俺は振り返って、那智と視線を合わす。
「大丈夫。なんでもねぇよ」
「でも…、兄さま」
「何? その子、あんたの弟? 変な呼び方させてるわね。サイッテー男らしい。自分が一番だとでも思ってるわけ?」
…なんでてめぇに弟のことを言われなきゃなんねぇ。
俺はカッと頭に血が上った。
つい声音を張って反論する。



