こんな騒動がある一方、おれ達の怪我は完治に向かって走っていた。
もうそろそろ頭の包帯は取れ、肩に負った傷も痛みが無くなる、そういう時期に差し掛かってきたんだけど退院の目処は立っていない。
まるで退院することを拒まれているかのように、医者との会話に退院の『た』の話題すら上らない。
これじゃ病院に住居を移したみたいだ。
病院の個室の一角を陣取っていつまでもおれと兄さまは入院生活。
個室には専用の浴室までついているから、一日の入院費とは別料金が発生する。万円単位だとか。
そんなお金、おれ達は払えないってことを医者も警察も十二分に分かっているだろうに、おれ達はぬくぬくと病室で過ごしている。
元々は個室が二つ用意されていた。
おれが兄さまの病室に居座るようになってから、片方は使われなくなたけど、普通に精算するととんでもない料金になるだろう。
はてさて退院したらおれ達はどう路頭に迷うんだろうか。
それを兄さまに言ったら、「借金地獄かもなぁ」他人事のように笑っていた。
兄さま、借金なんて屁でもないらしい。
というより借金を負う恐怖よりも、入院している現状に目を向けている。
「ギリギリまで病院に拘束しておいて、その場で逮捕したいんだろうな。
外に出せば逃亡する可能性も出てくるし。もう少しおれ等は入院だろうな」
「じゃあ警察が病室のお金を工面してくれたりは…」
「まっさか、そりゃ自腹だろう。警察がそんな優しいわけねぇ。
まあ、俺等の場合は保護者に請求書がいくだろうな」
ニヤリ、兄さまは意味深に笑みを浮かべる。
既に片親になってるおれ達だから、請求書はお父さんのところに行くんだろうな。
随分入院しているから、金額はとっくに十万単位なんじゃないかな。
「気にするな」
そう兄さまが言ったから、おれは気にしないけど。



