それからのおれ達の入院生活は慌しかった。
毎日のように刑事さん達はやってくるし、精神科医の梅林先生がおれ等をカウセリングしにくるし、病院内を兄さまとうろつこうとしたら関係者に止められたし。
どうやら容疑者候補に挙がっているおれ等は徹底的にマークされてるみたい。
一般病人・怪我人・入院患者に被害を加えないかどうか常に見張られている。
ためしに兄さまと中庭から、そのまま病院の外を出ようとしたら看護師に止められた。
あの慌てっぷりは目を瞠るものだった。
そうそう、あれ以来、おれは特に刑事さん達にマークされてるみたい。
本心の吐露、そして事件を臭わせる発言をしたからだろう。
いつ兄さまと離れるか、虎視眈々と観察してくる益田さんと柴木さんがいた。
聴取する度に目をぎらつかせておれを見張っている。
常日頃から兄さまの傍にいるおれは、彼等が来ると大抵目を閉じて昼寝の振り。
身を丸くして兄さまの傍で眠っている。
気が乗れば起きて絵本を読んでいるけど、刑事さん達とは滅多な事じゃ会話をしない。
兄さまに会話の一切を任せている。
刑事さん達にとって兄さまは邪魔な存在らしくて、この頃はよく兄さまだけ事情聴取に駆り出されそうになる。
だけど失敗に終わる事が多い、兄さまがおれを病室に置いていくことを拒絶しているんだ。
おれも兄さまの傍を離れたくなくて、兄さまがひとりで事情聴取に行こうとしたら、その背を追い駆ける。
「お兄さんだけなのよ。
那智くんは私と一緒に絵本を読みましょう?」
梅林先生がそう言ってくれても、おれは嫌だ嫌だと首を振って兄さまの背を追って腰に抱きつく。
その度に兄さまはおれの頭に手を置いて言う。
「いい子だ」って。
「那智はそうやって兄さまを逃がさないように、いつも追って来い」
兄さまに褒められて、嬉しく笑うおれがいた。



