最近のおれは自分でもおかしいと思う。
少し前まで他人の言葉をある程度は受け止められていたのに、今は心が笊にでもなっているのか、言葉が網目からすーっと流れ落ちてしまう。
他人になんと言われようと、感情を持たなくなっているおれがいるんだ。
お母さんのことも…、自分で凄いことしてるのに、最初の内は恐くて怖くて震えていたおれがいたのに。
―――ほら、もう震えるな。
那智はいつまでも兄さまと一緒になる、大事な一歩を踏み出したんだぞ。
安心しろ、地獄まで俺等は一緒だ。
(兄さまはアクの強い笑顔を向けて、)
―――俺と那智は咎人になった、本当の意味でずっと一緒だな。
だって俺達兄弟は犯罪者になったんだしな…。
那智はもう、俺以外の奴を好きになれねぇよ。
(いつものようにおれの頭を撫でて、)
―――那智は俺以外、もう誰も愛せない。
(愛してるとおれに言ってくれた)
兄さまの言葉は魔法そのもの。
震えがピタッと止まって、酷く安心するおれがいた。
今まで以上に兄さまが好きになったし、今まで以上に兄さまを愛したいと思ったし、今まで以上に兄さまには逆らえなくなった。
兄さまの言葉のすべてが正しく思えるんだ。
こうやって兄さまが傍にいてくれないと、窒息死しそうだ。
ふと、兄さまがおれの唇に指を当ててくる。
一瞥、兄さまを見上げた後、おれはそれを一舐め。「もっと」言われて、指を軽く食んで舐め上げる。
従順なおれを見下ろす兄さまは、「いい子だ」支配欲に塗れている。
「那智を人目に曝すのは勿体無いよな…。
どっかに隠せねぇかな。取られねぇように。永遠に隠せる場所…、ねぇかな」
犯罪めいた、監禁じみた台詞。
まあ犯罪者のおれが言える台詞じゃないけど…、でも兄さまがそうしたいなら、おれはそれに従いたい。
おれは兄さまが満足するまで指を食み、舐め続けていた。



