那智はやや気まずそうに治樹からジュースを受け取っている。
その様子に頭の回転が速い治樹は訝しげに、刑事二人を見据えた。
「弟に何かしたか?」
「なあに、『ヘンゼルとグレーテル』の話を聞かせてもらおうとして弟くんに拒まれちまっただけのことよ」
「それだけで弟が此処まで動揺しているとはなぁ…、那智、何かあったか?」
話題を弟に向ける治樹。
「ぁぅ」首を横に振って那智は何も無かったとアピール。誤魔化すようにジュースを飲んでいる。
見るからにありました的態度だが、この様子では那智も口は割らないだろう。
しかし諦めた様子がないのは治樹。
「まあいいや」後で聞けるしな、ストローの封を切ってパックに突き刺した。
警察の話は一切耳に入れる予定は無いようだ。
兄が戻ってきてはどうしようもない。
二人は病室を後にする。
その際、少しだけ病室の中を覗いて見る。
殺伐と下空気の中、
「那智、まさか他人に唆されてたんじゃねえだろうな?」
冷たい物の言い方をする治樹は、那智を膝の上に乗せてじっと見据えていた。
「そんなこと…ないです…」
「下手くそな嘘だな。相変わらず、俺には嘘つけねぇ奴だよ。てめぇは」
「仕置きだな」ジュースを飲みながら、治樹は弟に死刑宣告。
青褪めた顔を作る那智は兄の視線から逃げるように顔を背けていた。
「そーだな。このジュース、飲ましてもらおうかな。那智の口で」
にこやか、しかしシニカルに笑う治樹。
嗚呼、この後の行為は少しばかりご勘弁である。
刑事達は病室を後にした。
やはり兄は曲者だ。
弟から話を聞きだすには、兄を何とかしなければ…、そうすれば弟は自ずと語ってくれそうな雰囲気なのだから。
刑事二人は兄を唆し、どう弟から話を聞こうかと帰り際話し合った。
何となく解決の糸口が見え、捜査が軌道に乗り始めてきた。



