あーあ、また厄介なのが出た。
ナナシ女の名前は朱美っつーらしく、女友達に大丈夫かって身の安否を確認。
んでもって俺にガンを飛ばしてきた。
なんで女子ってのはこうも群れたがるんだ。
ダチに対してそんなにも仲間意識を強めてどうするんだよ。
所詮他人だろ?
俺には理解できねぇ。
他人と他人が仲良くしようとする、その気持ち。
それは浩司と優一にしてもそうだけどな。
「あいつ超ムカつくんですけど!」
彩加に謝る気ないよ、ナナシ女は俺を指差してきた。
「そういう奴だったってことでしょ」
女友達がそう俺を蔑んでくる。
そう思ってくれても構わないから退いてくれ。
那智と約束してるんだ。
いい加減、ウンザリしてきたやり取りに俺は舌打ちを鳴らし、女達の脇を通り過ぎて正門に向かうことにした。
あんま時間を取られたくない。那智との時間が削れちまうだろ。
「ちょっと待ちなさいよ!」
後ろから聞こえてくる怒声。
んっと、うざってぇな。
俺は無視することにした。
早足で正門に向かう。
その内、キィキィ声が聞こえなくなったから、多分諦めてくれたんだろう。
明日また突っ掛かってきそうだけど、まあ、それは明日のこと。
今日はもう仕舞いだ。
快晴の下、柔らかな微風を感じながら、俺は正門前に辿り着いた。
那智は直ぐに見つかった。
周囲は私服に対して、あいつは制服姿、見つけるのは容易だった。
俺は表情を崩して、塀に寄り掛かっている那智に声を掛ける。
携帯を弄っていた那智は顔を上げて、こっちに視線を向けてきた。
刹那、笑顔を零した…、後、
「あ、危ない!」
大声で避けるよう言われた。



