『お互いの依存度は虐待の度の高さを表しています。
二人は愛情に飢えた子供ですね…、心が子供のままなんですよ、きっと』
親他人に見捨てられたと思い込み、二人だけで生きてきた結果が今なのだと梅林は神妙な顔で自分達に説明してきてくれた。
そのため兄弟の結束は強く、物の世界観の視野は狭く、完全にふたりだけの王国を作り上げてしまっている。
「誰がそんな兄弟にしちまったのかねぇ。哀しい兄弟だ」
益田は同情心を吐き、珈琲を啜る。
「彼等が犯人だとしても責められませんよね。
そうしたのは死亡した母親なのですから…、いえ、那智くんは彼女を母親だなんて見てませんでした。
母親は兄だと言っていましたから」
「それだけ、兄貴からでぇーじに育ててくれたんだろうな。
しかし曲者だな。簡単に口を割ってくれそうにないし…、特に兄貴は策士だろ?
兄貴は頭がキレる。
こっちの行動を観察するように見やってるんだからな」
「私もそれは感じました。
治樹くんは頭がキレます。
那智くんはお兄さんにとても従順な子ですね。
弟を手玉に取れば、治樹くんも観念してくれそうなのですが」
「まず無理だな」
「ええ、お互いにべったりですからね」
「愛が強いしなぁ。男のおれにゃー、刺激が強い」
「女の私も十二分に強いですから」
揃って缶珈琲を傾け、胃に流し込む。
「病室に行ってみるか」
こうしていても始まらない。
動かなければ証拠は逃げていくだけだ。
立ち上がる益田を追って、柴木も空き缶を片手に立ち上がる。
缶を屑篭に捨てると、二人は兄弟のいる病室を目指す。
扉前に立つと二人はまず一呼吸。
ノックをして中の状況を確認。
返事が無いため、二人は顔を見合わせて、返事を待たず中に入ってみる。