くすぐったいと身を反らす那智と口付けしている俺は、ばれないよう流し目で向こうを観察。

扉に隙間を作って俺等を監視するように覗き込んでいる女刑事がひとり。
柴木は頭脳派なのかもしれねぇな。

俺等の行為を嫌悪することなく、寧ろ解れ口を探すように観察してる。

俺等の演技をあんま信用してねぇな。見据えてくる眼光が鋭い。

だったらこっちも本腰入れて演技をさせてもらわないとな。

てめぇみてぇな奴に俺等の計画を…、崩されるわけにはいかないんだよ。


俺等はもう後戻りができないんだからな。


那智の寝巻きを捲し上げて、直(じか)に背中に触れる。

母親の濡れ場を思い出しながら、俺は実弟の口内に舌を滑らせる。

那智は瞠目したけど、俺の意図が分かったのか成されるがまま。
懸命に応えてくれる。


ん…、俺は眉根を少しだけ寄せる。
 

不快感はないけど快感も無い。なんか変な感触だ。
ぬめっとしてやがる…、これの何処がいいのか分からないけど、那智だから…受け入れられた。

「ふっ…、」息を漏らす那智は目をとろんとさせ始める。
上顎を舌で嬲れば那智がひゅっと声を漏らす。演技以上の演技派だな、那智は。


「はぁ…、くるしっ…です」

「っ…ああ…、同感だ…」


初めてだから、お互いに離れた後は呼吸が乱れる。
息継ぎも分からねぇ…、演技とはいえクソ難しいな。
演技とはいえ求め合うって難しい、ん? 演技だから求め合うのか? 俺等。


「兄さまっ」


那智が上体を軽く起こして、痛む肩の傷に構わずまた俺の唇を塞いでくる。
軽く瞠目した俺だけど、目尻を下げて後頭部に手を回す。

セックスは演技、でもこうやって求めるのは本心。


他人と求め合う形は違っても、俺等は大事な家族。

飢えはこうやって満たしていくんだと思う。
家族に愛されなかった分、こうやって兄弟で。


濃厚なキスをした後、肩口に顎を乗せてくる那智は、ふーっと息を吐いて俺の背中にしがみ付く。


「にーさま…、おかーさんは死んでないですよ。刑事さんは嘘をついてます」

「ん?」