(旧)ふたりぼっち兄弟【BL寄り】



「悪かったな」


益田が詫びを口にしてくる。

まだ怪我の完治もしてないというのに、出過ぎた真似をしてしまった。

部下の分まで謝罪すると言う益田は、大層情の厚い男のようだ。
非を素直に詫びてくる。

柴木も行き過ぎた尋問だと気付いたんだろう。深々と頭を下げてくる。

俺は謝罪を右から左に聞き流す。


不意にポツリ、皮肉。
 
 
「あいつの死は随分価値あるものだな。
こうして警察が事件を明らかにしようと活躍してくれるんだから。

対して俺等の存在は価値もねぇのか。
誰も俺等を助けてくれなかったんだから。

親も近所も警察も、他人なんて所詮そんなもんだよな」


そんな世界に心底疲れた。
ああもう、逮捕したいならすればいいじゃないか。
 
悲観的な俺は投げやりに言って、ドロップを枕元に置くと横になる。
刑事達に背を向けて。

上体を起こして座り込んでいる那智は俺の顔を覗き込んで、「ぅー」小さく唸り、よしよしと俺の頭を撫でてくる。
 

「にーさま、泣かないで。泣かないで。
おれも悲しいです。兄さまはいい子ですから」

「ん…、那智もいい子だぞ」


「あぅ、にーさま声が泣きそう。
あぅ…、あのぉ、…ぁのぉ……兄さま…、虐めないで…、何でも、するから…、」


お願い、お願い、那智が半泣きで懇願すると向こうからまた謝罪の声が聞こえてきた。

「今日はこの辺で」

梅林が打ち切ってくれたものだから、尋問は終わり。

刑事達は俺と那智に再三再四詫びを口にして病室を出て行く。
梅林も刑事達を見送るためにいなくなる。



病室には俺と那智の二人だけ。



完全に気配が消えたことを確認して、




「これでいいですか?」




那智は無邪気に俺の顔を覗き込んで笑顔を見せてくる。

上出来だと前髪で表情を隠していた俺は、那智に綻び、おいでおいでと手招き。

嬉しそうにごろんと寝転がり、俺の腕の中に潜り込んで来る那智の額に口付けしてやる。