「お母さんが死んだのに、嬉しい?」
まだ反応を探る柴木に、「本当だとしたら心から喜ぶ」俺は笑みを濃くした。
わっしゃわしゃ、那智の頭を撫でながら俺は語り部となる。
「あいつは俺等を子供なんて見てなかった。俺等を虐げてばかりだった。
いつもそうだ、俺等に暴行、罵倒と熱湯を浴びせて玩具扱い。
愛情の欠片さえ見せてくれなかった。
死んで当然だ」
意味深に台詞を紡ぐ俺に柴木は何かを感じたのか、素早く口を開いて俺達が容疑者候補に挙がってると教えてくれる。
那智を撫でる俺の手が止まり、益田が眉根を寄せて柴木に注意。
精神科医の梅林は俺等の様子を気にし、「いきなりは…」止めてくるけど柴木は話を続ける。
完全に仕事モードだ。
「下川芙美子は貴方達の実家で焼死した。
腹部と背の二箇所に刃傷の痕、焼けたクローゼットの中から出てきた遺体は明らかに故意的に閉じ込められていた。
誰がどう見ても事故死ではなく他殺。
そして事件が起きる前日、貴方達は行方不明となった」
「柴木、やめろ。まだ時期じゃねえ」
仕事スイッチが入っている柴木は泊まる気配が無い。
真実を追究するように詰問になっていく柴木は、持ち前のセミロングヘアの茶髪を軽く耳に掛けて、俺と那智を交互に見据えてくる。
「調べで貴方達が虐待されたことも、近頃の生活様子も、ある程度把握しています。
率直に申し上げて、貴方達が容疑者として最有力候補なのですよ。
何故なら貴方達には明確な動機が存在しているから。
虐待をされていた貴方達なら殺意があってもおかしくな「柴木、もうやめろ! 口を慎め!」
声音を張る益田は厳しく柴木を諌める。
その声に那智がビクッと驚いて、思わず飴玉を飲み込みそうになる。
コホッと咳き込む那智の背中を叩き、「容疑者か」俺はペッと吐き出す那智の舐めかけの飴玉を手で受け止め、そのまま口に放り込む。
噛み砕いた。
口内一杯に広がる甘味。
ん、いちご味。
美味い。



