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那智を勝手に俺の病室に置いたおかげで、医者からうんたらかんたら注意を受け、そのゴタゴタをすべて大人達に任せた翌日の朝。
ようやく俺の愛すべき片割れが目を覚ました。
その時の感動といったら、思わず初っ端から泣き虫毛虫になっちまうほどだった。
何度も名前を呼んで呼んでよんで、なんて起きたバッカの那智に我が儘を言ったくれぇだ。
医者に診察してもらった結果、那智も大事には至ってなかったよう。
こうして俺達兄弟は医者から絶対安静を言い渡され、本来ひとりで使う個室を二人で共有。
ゆったりと広い筈のシングルベッドがぎゅうぎゅうと狭く感じる。
だけど心地良い狭さだった。
抱き合って眠れば十二分にゆとりが持てるしな。
目を覚ました那智の頭にも、俺と同じように包帯を巻いている。肩も負傷している。これも鳥井のせいだ。
俺は鳥井の顔を思い出す度、カチンと青筋が立っちまう。
けど今は極力思い出さないようにした。怪我に響くから。
二日ぐらいは回診以外、ゆっくりと二人だけで時間を過ごすことができた。
幸せだった、誰にも邪魔されず二人だけで過ごす時間に浸れる。
幸せでしあわせで夢心地を見ているよう。
那智が看護師に借りてきた絵本を読んでやったり、
簡単なパズルを一緒にしたり、
借りてきた本にあやとりなんてものが載ってたから、看護師に頼んで毛糸を貰って二人であやとりをしては楽しんだ。
なんか童心に返った気分。
いや今まで童心を味わえなかったから、こういう遊びが楽しくて仕方が無かった。



