しかも刑事達が専門の女精神科医を連れて来て俺をカウセリングし始めたもんだから、俺も堪ったもんじゃない。
余計パニックに陥ってしまった。
質問にも会話にも答えられず、嫌だ嫌だと連呼するだけ。
傍から見たら異常な俺を観察した女精神科医(名前は梅林っつーらしい)は、おもむろに拘束具を取っ払ってくれた。
一緒にいた刑事二人は大丈夫なのかって聞いてたけど、梅林は軽くスルー。
駄々捏ねている子供の頭を撫でて、こう言ってきた。
「さあ、行きましょう。弟くんのところに」
瞠目する俺に動けるかと、梅林は優しく微笑んでくる。
緑の黒髪が印象的な梅林は垂れるもみ上げを耳に掛け、「隣にいるから」俺にカーディガンを羽織らせて背中を叩いた。
「しかし梅林先生」
今、会わせるのは…、柴木が意味深に物申す。
どうやら那智はまだ目が覚めていなく、こんな状態の俺を会わすのは危険だと思っているらしい。
「一緒ですよ」
梅林はいつ会わせたって一緒だと言い、ゆっくりとベッドから下りる俺の腕を引いて誘導してきてくれる。
その際、大声は上げないこと、なんて子供染みた注意をしてきた。
「此処は病院だから」
見上げて微笑んでくる梅林は俺を連れて廊下に。
そして少し離れた隣の個室に俺を連れてってくれた。
時刻は夜らしく、等間隔に並んでいる窓の一角の向こうを見ると漆黒の空が顔を出していた。
ガラ―。
個室を開けた梅林は俺の背を押して、中に入るよう声を掛けてくる。
よろめくように中に入った俺は、シンと静まり返るベッドの上で眠っている片割れを見つけて息を呑む。
そして弾かれたように駆けて無作法にベッドに乗り上げた。
拍子にスリッパが脱げ落ちる。気にする余裕も無かった。
益田と柴木が止めに入るけど、それを梅林が止めてくれたおかげで、俺は誰にも邪魔されず片割れを抱き締めることが出来た。
同じように包帯で手当てを施されている弟の顔を覗き込んで、俺は軽く目尻から雫を零す。
嗚呼、生きた心地がする。
余計パニックに陥ってしまった。
質問にも会話にも答えられず、嫌だ嫌だと連呼するだけ。
傍から見たら異常な俺を観察した女精神科医(名前は梅林っつーらしい)は、おもむろに拘束具を取っ払ってくれた。
一緒にいた刑事二人は大丈夫なのかって聞いてたけど、梅林は軽くスルー。
駄々捏ねている子供の頭を撫でて、こう言ってきた。
「さあ、行きましょう。弟くんのところに」
瞠目する俺に動けるかと、梅林は優しく微笑んでくる。
緑の黒髪が印象的な梅林は垂れるもみ上げを耳に掛け、「隣にいるから」俺にカーディガンを羽織らせて背中を叩いた。
「しかし梅林先生」
今、会わせるのは…、柴木が意味深に物申す。
どうやら那智はまだ目が覚めていなく、こんな状態の俺を会わすのは危険だと思っているらしい。
「一緒ですよ」
梅林はいつ会わせたって一緒だと言い、ゆっくりとベッドから下りる俺の腕を引いて誘導してきてくれる。
その際、大声は上げないこと、なんて子供染みた注意をしてきた。
「此処は病院だから」
見上げて微笑んでくる梅林は俺を連れて廊下に。
そして少し離れた隣の個室に俺を連れてってくれた。
時刻は夜らしく、等間隔に並んでいる窓の一角の向こうを見ると漆黒の空が顔を出していた。
ガラ―。
個室を開けた梅林は俺の背を押して、中に入るよう声を掛けてくる。
よろめくように中に入った俺は、シンと静まり返るベッドの上で眠っている片割れを見つけて息を呑む。
そして弾かれたように駆けて無作法にベッドに乗り上げた。
拍子にスリッパが脱げ落ちる。気にする余裕も無かった。
益田と柴木が止めに入るけど、それを梅林が止めてくれたおかげで、俺は誰にも邪魔されず片割れを抱き締めることが出来た。
同じように包帯で手当てを施されている弟の顔を覗き込んで、俺は軽く目尻から雫を零す。
嗚呼、生きた心地がする。



