「治樹くん、具合はどうだ?
まだ目が覚めて記憶が曖昧のようだが、なに、心配は無い。
二日間、寝っぱなしで脳みそが働いてないんだろう」
「ふつ、か?」
「そう、二日間、貴方は眠っていたの」
―――…。
あ、だんだんと記憶がはっきり…、そうだ、この怪我は鳥井の野郎が。
苦々しく笑って俺に…、
『若旦那悪いねぇ』って…、
クソッ、何が忠義だっ、あの阿呆め!
今度会ったらどうしてくれようか。
―――…。
あ。
俺は瞠目した。
口内がからからに乾涸びていく。
厭に胸が高鳴った。
グッと鼓動を抑えて、俺は胸部を寝巻きの上から握り締める。
一呼吸置くと俺は急いでベッドの周りを見渡す。
忙しなく目を動かす俺に気付いたのか、柴木が「弟さんなら別室で休んでますから」優しく告げてくる。
サーッと血の気が引いた。
いな…い?
いない?
いない。
大事な、大事な、大事な片割れが此処にはいない。
「ぁ…ぁ…」
俺は二の腕を握り締めて怖じた。
ひとりで病室にいることに、ベッドにひとりで寝かせられていることに、ひとりぼっちなことに。
嫌だ…、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
ひとりなんて嫌だ!
孤独なんて味わいたくない!
「那智っ、那智!」
「だ、ダメです! まだ動いては! あ、治樹くん!」
俺は急いでベッドから転がるように下りた。
ベタン―。
勢い余って無様に転がり落ちたけど、上体を起こして、床を這いながら廊下を目指す。



