午前中の講義が終わると、俺は颯爽と大学の正門に向かう。
最近持ち始めた携帯で連絡を取り合ってみると、那智は既に正門前にいるらしい。
あいつの話によると、結局学校には行けなかったみてぇだ。
図書館で大人しく勉強していたとか。
ま、それもいいんじゃねえかって思う。
那智が傷付かないなら、図書館にいようとも保健室にいようとも構わない。
俺の傍から離れなきゃ別にどうしていてもいい。
あいつを守れるのは俺しかいねぇしな。
何か那智に傷付く事があったら、何が何でも守ってやろうと思う。
それが俺の生きる意味でもあるから。
校舎を出た俺は中庭を通って正門を目指す。
「なーあ、治樹。一緒に飯食おうぜ。
なーあ!
午前中で終わりだろ?
俺、知ってるんだぜ!」
………。
その前に問題が一つあった。
さっきから俺の後ろを纏う奴がいたんだ。
俺は足を止めて、軽く頭を掻いた後、「ついて来るな」優一を突っ返した。
けど優一はニコニコッと、
「ツンデレさんなんだから」
って俺の突っ返しをスルーしてきやがる。
こいつはいつだってそうだ。
俺の素っ気無い態度をツンデレだの何だのわけ分からない言葉で流してきやがる。
「約束がある」鼻を鳴らして誘いを断れば、
「彼女か!」お得意の悪ノリが出た。
だからこいつは厄介なんだ。
俺のペースを掻き乱す。
「浩司、こいつを回収しろ。俺は急いでる」
俺は後ろにいた浩司に助けを求めた。
こいつの暴走を止められるのは、浩司しかいねぇ。
俺の気持ちを酌んでくれる浩司は優一のシャツの襟首を掴んで学食に向かう。
「佐藤、今日も下川の勧誘は失敗です。
大人しく学食にでも行きましょう」
「うぇええ!
いいじゃんかいいじゃんか! はーるーき!」
「はいはい、今日も大人しく自分と一緒にご飯を食べましょうね」
ずるずるっと浩司が優一を引き摺り去って行く。



