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時刻は午後10時。
 
マスコミが一連の事件を嗅ぎ付け、より美味い餌を得ようと徘徊する中、益田と柴木は全焼した実家、そして兄弟が住んでいたアパートを訪れ現場検証。


また兄弟の行方を捜し出そうと情報収集に余念は無く。


近所の住人は勿論、実父の下川道雄を個別に呼び出し、署に赴いてもらって事情聴取。


下川道雄は思ったほど取り乱した態度は無く、兄弟には申し訳ないことをしていると後悔の色を見せていた。

また別の家族に事件の繋がりがあることを内密にして欲しいと頼んできたため、週刊誌に載られてしまう可能性もあるから、安易にマスコミに応対しないようにと助言。


なるべくプライベートには足を踏み入れないことを約束した。


そうこう忙殺な時間を過ごしているうちに、時刻は10時を回ってしまう。


流石に連日連夜、車泊や署に寝泊りしていると疲労が溜まってくる。

女の柴木には家に帰って、一寝入りしても良いと益田が許可を出すが、柴木は大丈夫だと仕事に精を出すものだから益田は舌を巻いた。


いやはや、女とはタフな生き物のようだ。

自分なんて、今からでも家に帰りたいというのに。

彼女が生真面目だから、というのも理由に入るかもしれない。


では午前様を過ぎたら仮眠を、なんて脳裏に過ぎらせていた一時間後のこと。


事態は急変した。


それは捜査官の連絡により一変。
 

下川兄弟が見つかったというのだ。


場所はアパート近くの公園の公衆便所。負傷しているという。


マスコミが近くにいるため、益田と柴木は事を荒立てないよう、こっそりと現場に向かう。

何度も探した公園の公衆便所、男子側最奥の個室。


確かにそこに下川兄弟がいた。



現場に駆けつけた刑事二人は絶句する。



兄弟は身を寄せ合い、頭や肩から血を流して失神していたのだ。