「やっぱりでばがめは無いわよね…、何してるんだか、あたし」
さすがに口付けの時はギョッと驚いて、慌てて光景を見ぬよう陰に隠れたが。
いや、ちょっとドキドキして見てしまったけど、嘘、だいぶん見てしまったのだけれど。
「絵になってたわね。あの二人」
いや、言いたいところはそこじゃなくて。
やり取りを交わす下川兄弟は脆かった。
あの時の下川兄弟はとてもとても脆かった。
なんだか此方の母性本能が擽られてしまうほど、脆かった。
飛び出して、抱き締めてやりたいほど。
「こういう風に思うってことは、あたし、下川に何か思うことでもあるのかも。
気分は二人のお姉さんってカンジだけど…、なんか守ってあげたくなったわ」
あーあ、無事でいなさいよ、馬鹿。
あんたまだ彩加に謝ってないんだから!
皮肉る朱美だったが、不意に胸が締め付けられる思いがした。
「ん?」
朱美は店向こうに人の気配を感じ、そちらに目を向ける。
誰もいないことに朱美は首を傾げた。
気のせい、だったようだ。



