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【駅前の花屋前にて】
― Flower Life ―
午後8時を回ったある日のこと。
店長が奥の部屋でラッピングをしている中、朱美はレジ番任されていた。
しかし夜に花屋を訪れてくれる客はさほどいない。
朱美は暇を持て余していた。
欠伸が漏れるほど、退屈で仕方が無かった。
閉店時間は残り一時間。
あと一時間で帰れるのだが、それにしても何かアクションがなければ暇で突っ立ったまま寝てしまいそうだ。
欠伸を噛み締めながら、朱美は何か思考を巡らせることにした。
しかし考えることといったら…、やはり最近世間で騒がしている知り合いの兄弟のことしか。
「あいつ等…、無事だといいけど。
下川ってほんと、何から何まで腹立ついけ好かない男だったけど、悪い奴だとは思わないし…、まあ弟限定で」
だけど、なんか放っておけない奴なのだ。
何処となく壊れてしまいそうな彼等を、こっそりと盗み見てしまったから。
実をいうと朱美は鳥井の襲撃事件後、こっそりと兄弟の後をついて来ていたのだ。
極力距離を置き、ばれないよう、兄弟の後をこっそりと。
あそこで帰っても後味が悪いものだったのだ。
朱美は見た。
鳥井の血で汚れっていた兄の手を、躊躇なく握る弟の姿を。
路地裏に弟を連れ込み、その体を抱き締めていた兄の姿を。
必要として欲しいと欲する兄は名前を呼ぶよう頼み、弟はそれに精一杯応える。
―――…兄弟の見てはならぬ脆い一面を見た気がして、更に決まりが悪くなった。



