「治樹、素っ気無いし性格難だし、高校時代は度々クラスメートと問題を起こしてたけど、俺に取っては大事な友達なんだ。
虐待のことも、実は薄っすらボンヤリとだけど気付いてた。
あいつと一緒にいる時間長かったし、袖下の腕…何度か見ちまったから」
でも何も聞けなかった。
治樹、体育の時間になると着替えを持ってトイレに行っちまうから…、触れられたくない話題なんだって、俺なりに気を遣ってたんだ。
「素っ気無い治樹でもさ、一度だけ表情を崩させたこともあるんだぜ?
これ、俺の自慢なんだ。
デレじゃないけど、年齢相応に微笑ませたことがある」
その日、治樹の通学鞄にやたら不恰好なマスコットがぶら下がってて。
下手くそなマスコットだなぁ…、でも誰かに貰ったのかなぁ? って思いながら、
『いいなぁ、治樹。マスコット作ってもらったのか? 手作り感溢れてて愛情篭ってそう!』
そう言ってマスコットを褒めたんだ。
そしたら治樹、
『だろ? 俺の宝物だ』
得意気に表情を崩して笑ったんだ。
びっくりしたよ、あいつがあんな風に笑うなんて…。
いっつも不機嫌、能面、もしくは素っ気無く本を読んでたから。
アレで俺は思った。
治樹はツンデレだ!
…って。
「意外とあいつ、普通なんだ。
そりゃ性格難で弟に対しちゃ異常愛を抱いてるかもしれないけど…っ。
それでも治樹は…、俺にとっては大事な友達なんだっ…。
あいつは、自分でも気付かない内に、誰を助けたりしてるんだ。
恨まれるようなこともしてるけど…、でも少なくとも俺を助けてくれた。
治樹のことを必要とする奴いる…、あいつ、それを知ってるのかなぁ。
心配する奴がいるってこと、知ってるのかなぁ…。
治樹が行方不明だなんて。
行方不明だなんてっ…」
語り部が上擦った声を、次第次第に涙声を出して項垂れる。
「佐藤」浩司が語り部の肩に手を叩き、教室を出るかと気遣いを見せる。
大丈夫だと優一は力なく笑ったが、無理していることは一目瞭然。
しかし敢えて彼の気持ちを酌み、そのまま教室に残ることにした。



