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福島朱美が下川兄弟の行方不明と一連の事件を知ったのは、大学に訪れていた二人の刑事に声を掛けられてのこと。 
  


その日―。
 
午前の大学の講義を終えた朱美は、安河内友香、高村彩加と共に学食へと足を運ぶ最中だった。


しかし校舎移動中の途中、明らかに大学に場違いな雰囲気を取り巻いた男女が自分達に声を掛けてきた。


年期の入った雰囲気に朱美を含む三人は警戒心を抱いたが、ただならぬ雰囲気とこっそり見せてきた警察手帳に相手の正体を知る。


上司であろう男刑事は益田(ますだ)、部下であろう女刑事は柴木(しばき)と名乗る。
二人は少し話があるから同行して欲しいと頼んできた。


なに、少し情報を聞きたいだけだと彼等は愛想よく微笑んでくる。


だからといって警戒心が解ける筈もなく、三人はどうしようもなく顔を見合わせていた。


皆が皆、生まれて初めて警察、しかも刑事階級に声を掛けられ、些少ならず動揺していたのである。


だが、こうしていても時間の無駄だと、三人は仕方が無しに刑事の後をついて行った。
 

もし不審なことを起こされたら大声で叫ぼう。


大丈夫、此処は大学でしかも真昼間、何かあれば誰かは声に気付いてくれる。


大きな警戒心を抱きながら三人が刑事達と向かった先は、大学内にある駐車場。


並列している車の一角に、二人の青年が見受けられた。

佐藤優一と、早川浩司だ。


「あれ、お前等も?」優一の問い掛けに、

「あんたも?」朱美は問い返す。


皆が皆、刑事に声を掛けられ、此処に誘導されてきたらしい。

これまた奇妙な面子が揃ったものだ。


はてさて、どうしたものか。
目を白黒させる一同に、男刑事の益田が念を押す。ただ情報を聞きたいだけだと。

どんな情報なのか…、問い掛ければ彼は間髪容れず答える。


下川治樹についてだと。


今度こそ目を剥いた。

何故、刑事が彼について情報を聞きだそうとしているのか…、一番動揺したのは高校時代の一緒だった優一。