浩司のツッコミに、「だってさぁ」面白くねぇんだもん、優一は脹れた。
読むのは俺だ。関係ネェだろ。心中でツッコミながら、俺は本を読み進めていく。
二年後のことを考えると、何が何でも良い就職先を見つけ出したい。
那智と平和な生活を送るために。
そのために知識がもっと欲しい。
―――バンッ!
突然、机に振動と物音。
俺の目の前で起こった出来事だ。
けど俺は無視して本を読み進める。
俺には関係のないことだ。
「ちょっと仏頂面に本を読んでるあんた。
あんたよ、そこのあんた。
経済統計論ってクソ面白くない本を読んでるあ・ん・た!」
うっるせぇな…、俺かよ。
俺は投げやりに前方を見やった。
そこには薄化粧をしている、まあ、可愛い服装っつーの?
今時の女が好みそうな格好をしている女が仁王立ちしていた。
誰だよ、お前。
片眉をつり上げる俺に、「あんたサイッテー!」いっきなり悪態付かれた。
だからお前、誰だよ。
「あんたっ、一昨日彩加(さやか)を傷付けたわね!
調べはとっくに付いてるのよ!
ちょっと面、貸しなさいよ!」
誰だ、彩加って。
肩を竦める俺は本のページを捲った。
刹那、文庫本が取られる。
おい、何するんだよ、まだ読み途中だっつーの。
「シカトしてるんじゃないわよ!
彩加、どーしてあんたみたいな男に惚れたのかしら!
あんたさっ、一昨日、彩加の気持ちを踏み躙るようなフリ方したでしょ!」
「うわぁー、治樹を好きになる奴がいたんだ」
「下川をなぁ。そりゃ奇特な奴だ」



