(旧)ふたりぼっち兄弟【BL寄り】

母親と、自分の行為、両方に怖じているのだろう。

ブルブルと身を震わせている。
 
憎悪が増すが首を締める力までなく、寧ろ横から蹴り飛ばされてしまったため、芙美子は背中と腹部と折れた腕の痛みに身悶えることしかできない。


失神できればいいのに、失神するにはまだ遠く…、まるでそれを赦さないかのようだ。

気を失えればどれだけ楽だろう。


芙美子は呼吸を乱しながら、我が子と呼ぶべき子達を見やる。


「那智っ、馬鹿!
なんでてめぇっ…、車に居とかなきゃダメだろうが! なんで兄さまに任せとかないんだよっ!」


「だって…にーさま、ひとりでお母さん…、自分だけ罪を被ろうと…するから」


知ってたんですよ、兄さまがひとりで罪を被ろうとしてたこと。
次男は弱々しく微笑み、赤く染まった自分の手を見つめてパタパタっと雫をフローリングに落としていく。


「おれ、こっそりとついて来たんです…。ずっとトイレに隠れてました…。
ふふっ、汚れちゃいました。おれの手、真っ赤…、汚い。また兄さまに嫌われる。
でもいいです…、兄さまが汚れるくらいなら…、汚れるくらいなら。

警察…捕まるのはおれだけで十分です」


涙を流しながら身震いする弟を、「汚くねぇ!」兄は必死に抱き締めて否定する。


「汚くねぇよ、那智は綺麗だ。
兄さまのために、馬鹿ばっかしやがってっ!

これ以上、俺を那智で狂わせてどうする。
いつもそうだ那智は俺を狂わせる。
誰もが俺を見捨てるのに、那智だけは、那智だけは俺を見捨てずに傍に居てくれる。

嗚呼、放さない、ぜってぇ放さないからな。警察にだって渡すもんか。
渡すくらいなら俺がてめぇを殺す」

兄は壊れていた。
誰にも弟を渡すものかとキツク抱擁し、自ら血で汚れている弟の手に手を重ねた。



「にーさま…、好き」



弟も壊れていた。
束縛とも言い難い好意を甘んじて受け止め、重ねた手を握り締めているのだから。


芙美子は気付く。
嗚呼そうか、奴等は壊れている。


無様なジャンク兄弟なのだと…、それを生み出したのは紛れもない自分なのだと。

回避することは幾らでもできただろうに。

すべては後の祭りだ。