「折角の美貌が台無しだな」
多分、痕になるぜ。眉間に赤い点ができてる筈。
皮肉る長男の一蹴が横腹に入り、芙美子はフローリングに倒れた。
片手で顔面を押さえながら、芙美子はギッと相手を睨むが効果はなし。
冷ややかな目で長男は自分を見下す。
その目は殺意さえ篭っていた。
点けたばかりの煙草を再び、芙美子の腕に押し付けてくる長男は、そのままその左腕を掴む。
「大人しく俺等を放っておけばこんなことにならなかったのにな。
ほんっと救えない母親だ、あんたは」
「この決定はっ、あ、あたしだけじゃない!」
興味深げに長男は片眉をつり上げる。
「どういうことだ?」
詰問してくる長男に、芙美子は口を開いてぺらぺらぺら。
「か、金を用意したのは道雄だっ!
依頼は道雄とっ、いや、道雄に唆されてやったことだ!
あいつは別の家族を守るために、あんた等を消そうと持ち出してきた!」
罪を実の夫(というべき存在)に擦り付ける芙美子。
長男は軽く瞠目、そして、小さな笑声、次第次第に大声で笑声を上げる。
「そうか! これはあんたとあいつの決定か!
傑作だな!
俺も那智も、実の両親に命を金で売られたのか!
たった二百万って端金で俺等を売ったのか!
はははっ、傑作だ! 大傑作だ! てめぇ等グルだったのか!」
腹を抱えて笑う長男は恐ろしいほど馬鹿笑い。
「これだから他人は信用ならねぇ!」
ヒィヒィ腹を抱えて笑う長男は、糸が切れたように狂気の面を見せる。
そう、最後の正常という糸が切れてしまったように長男は不敵に笑って、グッと掴んでいる腕を引き寄せると、そのままあらん方向へゴキッ―!
不快音と同時に断末魔のような絶叫。
喉が裂けんばかりに叫ぶ芙美子は折られた左の腕を右の手で掴む。
罪悪さえ感じないのか、長男はグルだったのかと、芙美子の腕から手を放し、立ち上がって反芻。
クスリと笑声を噛み締めている。



