「テクニシャンよ、俺」
笑声を漏らす鳥井は快諾し、上体を起こしてハンドルを握る。
アクセルを踏み、車を前進させる鳥井は一旦芙美子を家に送ると告げてきた。
まずは遺体の処分をしなければ、鳥井は飄々とした面持ちでハンドルを右に切る。
畏怖の念に駆られている芙美子は家に送られた後のことを考える。
どうする、鳥井がいなくなったらトンズラするか。
いやしかし、鳥井は裏社会で生きる男。
若人でも恋人を殺傷してしまうのだからやり手には違いない。逃げても直ぐ捕まるだろう。
大人しく鳥井の女に成り下がるのも手かもしれないが…、生理的に鳥井は受け付けない。
鳥井の容姿に嫌悪しているのではなく、平然と遺体を車に乗せているイカレタ精神が受け付けないのである。
先ほどから、後部座席に異様な冷たさを感じるのは…、やはり遺体が積んであることを自分が怖じているからで。
こうなれば警察に逃げ込んでみるか。
悶々と思案を巡らせていた芙美子だが、改めて子供の行方を尋ねた。
「俺よりガキ?」
鳥井は不機嫌に眉根を寄せるが、一変して破顔。
「兄貴はやり手だったが…、弟を目の前で失って発狂しちまった。
そこをグサリとな。部屋で殺っちまったもんだから、部屋が汚れてな。
証拠隠滅のために燃やしたとさ。おしまい。
面白おかしいお話でした。
ちなみにガキ達はトランクの中にいるぞ」
「なッ?!」
「会ってみるか? 一応母親だろ、あんた」
かぶりを振って芙美子は全力で拒絶。
遺体を三体も車に積んでいるなんて異常なのではないだろうか、この男。
隣に座るのも怖くなってきた。
今更ながら自分は大変な男に仕事を依頼したのではないだろうか。
後悔してももう後の祭りだった。
恐怖が胃を締め付け、吐き気を誘うが芙美子は必死に堪えた。



