以前と打って変わって鳥井は強気。
というのは、やはり後部座席で恋人が仏さんに以下省略。
そして自分は以前と打って変わって弱気。
というのは、やはり後部座席で恋人が仏さんに以下省略。
口腔がからからに乾涸びていく。
しかし此処で下手に弱気を見せれば付け上がるに違いない。
芙美子は持ち前の勝気を気丈に振舞ってみせた。
少し手違いで金を忘れたのだと…、故意的に忘れたなんて口が裂けても言えなかった。
気丈に振舞っているようで芙美子は遺憾な事に、大きな同様を抱えていたのである。
「やーれやれ」
鳥井は頭の後ろで腕を組んで、後部座席をチラリ。
無意味な殺生までしたというのに、金が足りないとは…、話にならない。
グチグチと文句タラタラに愚痴る鳥井だが、「あんたって綺麗だよな」不意に美貌を褒めてくる。
これまた突拍子も無い話題だが、鳥井がまけてくれてやっても良いと軽い口振りで言ってくる。
その代わり、ちらりと此方を見てくる鳥井は「殺人者はオキライ?」にやりと口角をつり上げてきた。
目を白黒にさせる芙美子だが、「狙ってたんだよねー」腕を解いてハンドルに凭れ掛かる鳥井は頬杖を付く。
「あんた美人さんだしさ。俺、年上好みなんだわ。しかも強気ときた。
どストライクなわけだ。
でもコブ付きだろ?
邪魔だったんだよね、あんたの恋人さん」
「だから…殺したのかよ」
「どっかの誰かさんの言葉を借りるなら愛ゆえに、だな」
俺ってロマンチストだねぇ。
自画自賛する鳥井は「一発ヤらしてくれね?」なんとも頓狂な事を言ってくる。
芙美子からしてみれば、願い下げである。
何が悲しくて殺人者と…、だが逆らえば殺されかねない。
だから芙美子は条件を付けた。
仏になっている恋人の遺体を処分すること、それと自分に飛び火させないこと。
ご臨終の恋人に悲しみを抱くことは無いが(所詮は上辺と体だけの付き合いだった)、自分まで犯人扱いされては堪ったものではない。
処分が終わるまで色欲も抱かない。
芙美子は苦言する。



