が、圏外になっているため携帯は使えず。
「電波が悪いのかよ」
口汚い言葉を吐き捨て、舌を鳴らす芙美子は地道に鳥井の車を探す羽目になった。
薄暗い地下駐車場にはずらりと車が止めてある。
親子連れが遊びに来ている結果がこれだろう。
並列している車を横目で眺め、あちらこちらに目を配りながら芙美子は鳥井の姿を捜す。
「よ、そこの美人さん」
不意に飛んでくる声。
聞き覚えのある声に苛立ちを募らせながら振り返れば、太いコンクリート柱に寄り掛かってへらへらっと笑っている男の姿。鳥井だ。
三十路を迎えた男は若干若く見える。童顔のせいだろう。
「どういうことだよ」開口一番に芙美子は文句を垂れた。
「おやおや」いきなりそれは無いんじゃないか、鳥井は肩を竦めて歩み寄って来る。
「俺は仕事をこなしたぜ?」
「フッザけるな! サツに目ぇ付くようなことしやがって!」
怒声を張る芙美子に鳥井はやっぱりへらへらへら。
前回は失態一つで平謝りをしていたというのに…、やはり恋人がいたからだろう。
嗚呼、恋人が憎い。
何故、此処に恋人がいないのか!
八つ当たり混じりに芙美子は喉が裂けんばかりに怒声を張る。
「鳥井! あんた、分かってんのか!」
「はいはい、怒鳴らない怒鳴らない。此処は一般人もやって来るお駐車場だぜ? 取り敢えず話は車の中だ」
誘導してくる鳥井にやきもきを抱きながら、芙美子は後に続く。
「ドーゾ」
わざわざ鳥井が後部座席のドアを開けてくれるが、芙美子は礼の一つもくれてやるつもりはなかった。
が、後部座席に乗ろうとした芙美子は絶句することになる。
なんと恋人が後部座席に乗っていたのだ。
ただ乗っているならまだしも、恋人は既に息絶えている。



