二子が家を出て行き、芙美子は一年という月日を経て、ついに二人を消す、もしくは再起不能になるまで精神破壊をしてくれるよう“チェリーボーイ”という表向きアダルト会社に依頼を申し込む。
 
新たな恋人も作った。

ヤクザ関係の血の気の多い男を手玉に取り、男に尽くして、代わりに守ってくれるよう促した。
その前に惚れてしまった会社員の男を恋人にしていたのだが、自分の人生を取って、男とは別れていた。


しかし齢40の自分だが、現恋人となっている男はホイホイ自分の魅力に食い付いてきてくれる。

こうもあっさりと次の男が捕まるなんて。


まだまだ自分も捨てたもんじゃない。

芙美子は歪んだ感情を抱いた。



さて、そんな芙美子は夜中、のらりくらりと爪の手入れをしているところだった。

今宵の性交のために少しでも自分を魅せようと、爪を磨いているところだったのだが、一本の電話により、予定のすべてが打ち崩された。

電話の相手は驚くべきことに、警察。
内容はあるまじきことに二子のこと。

芙美子はどぎまぎしながら、警察の話に耳を傾けていた。


曰く、二子の住むアパートが火事になったらしい。


そして二人は行方不明だとか。


芙美子は理解する。
自分の依頼が叶ったのだと…、契約期限は明日まで。

きっと二人はどこかで殺されたか、もしくは再起不能まで叩きのめされている頃だろう。

しかし警察の目に付くような仕事なんて言語道断ではないか。


てっきり明るみに出ないよう始末してくれると思ったのに。


雇った鳥井という男はつくづく使えないらしい。

一度ならず二度もヘマをするなんて。
ネットと口コミで“チェリーボーイ”の腕の良さは噂だっていたというのに、ガセだったのだろうか!

警察なんぞに目を付けられたら、最悪自分のこれまでの素行がばれてしまうではないか!


煮え滾る思いを噛み締めながら、警察の話を適当に打ち切って芙美子は部屋に戻る。

警察は明日、詳しい事情を聴きたいからと訪問予告をしてくるが冗談ではない。


明日は鳥井との約束があるのだから。