歪んでるなら歪んでると罵られてもいい。
近親相姦だと嘲笑われても、同性愛者だと見下されてもいいから、俺は価値が欲しい。絶対的な価値が欲しい。
幼少期に味わった“手前なんて無価値だという絶望”を味わうのはもうヤダ。
いつまでも価値ある人間だと思いたい。
たった一人の人間でいいから、そう思われたい。
と、小さな体がより密着してくる。
「兄さま」声を震わす那智は握り締めている俺の手を更に握り、小声で俺に言う。
ひとりぼっちはもう嫌だ、またひとりぼっちになったら今度こそ壊れてしまいそうだと。
イラナイって言わないで…、いい子にするから、綺麗にするから、イラナイ以外だったらどんなことでもするから。
本音を漏らす那智は渇望した飢えを満たすように俺に縋ってきた。
心地良い…、那智の懇願とその欲が心地良い。
でも片隅で思う。悲しい。
那智が震えてるから…、那智には笑っていて欲しい。
泣き顔はそそると思う。
俺に必死に食らい付いてきて、切迫した顔で懇願姿は満たされる。
だけど俺、笑顔が一番好きなんだ。
笑顔で求められるのが一番好きなのかもしれない。
那智の笑顔が好きだ。
泣かすとどっかで罪悪が生まれるから。
傷付けたわけじゃないんだ、俺は那智の一番でいたい。
ずっとずっとずっと一緒にいたい。
それだけなんだ。
「イラナイ。那智の居ない世界、兄さまはイラナイ」
ゆっくりと那智を下に敷いて、顔の両サイドに肘を置く。
ベッドに沈む体、重力で垂れる前髪をそのままに、目と鼻の先の距離で視線を合わせる。
「手前から那智をイラナイって傷付けておいて、俺は那智のいない夜に堪えられなかった。これ、自分でやっちまった」
俺は服の袖を巻くって那智に腕を見せる。
包帯を取り払うと、生々しいミミズ腫れやら引っ掻き傷、噛み痕、手前で傷付けた自虐行為に那智は瞠目。



