物凄い後悔したのはその後のこと。
俺は苛めっ子の気分で那智に言ったんだけど、那智は真に受けちまったっぽくて、目で分かるほど恐怖に震えていた。
血の気が完全に引いてるみたいで、ひゅっひゅっと俺の指銜えながら青褪めている。
「ごめんにゃひゃいっっ…、おひぇっ、おひぇっ…ゆゆひひぇ…くだひゃいっ。
(ごめんなさい、おれ、おれっ、許してください)」
でも嘘付いたのはおれだから。
ううっ、兄さまに舌を切られるんだ。ちょん切られるんだ。甘いもの食べられなくなるんだ。
じゃあせめて、最後にチョコレートケーキ食べてから舌を切られたい。
我が儘言っていいならプリンも一緒に食べたい。
これからはもうお菓子、もう食べられない。
食べても甘いもの感じられない。
美味しいものも不味いものも分からないんだ。
だけど仕方が無い。
兄さまに嘘付いたんだし。
目をウルウルさせる那智は俺に謝罪謝罪謝罪、仕舞いには恐怖のあまりワッと大声で泣き始めた。
「嘘だ嘘!」
那智の口から指を抜いて、何度も嘘だと言うけど、自分は嘘を付いたからと大声で泣いては、舌を切られる罰は受けるとワンワン泣いた。
もう火が付いたようにワンワン泣くもんだから、風呂に入るどころの話じゃなかった。
どんだけ那智を泣かせりゃ済むんだろ、俺。
すっげぇ後悔したのは言うまでも無かった。



