「兄さまはおれがまた、汚くて悪い子に成り下がったら…、どうします? いらない?」
いらない―。
そう言ったらどうなるんだろうな。那智、傷付くよな。
だけどそういう顔が見たいなんて思う俺がいる。
あれ、那智をアレだけ守りたいって思ってたのに…、なんで手前が傷付けたいなんて思ってるんだ。
服従させたいというか、支配欲に塗れた俺がいるというか、独占欲丸出しの俺がいるというか。
どうあっても俺は那智の世界を俺中心にしてぇみてぇだ。
「そうだな…いらないかもしんねぇ」
ビクッと怯える那智に細く微笑んで、「いらないは嘘だ。けど」俺は言葉を重ねる。
薄っすら開いた唇に右の人差し指と中指を当てて、一気に口内に突っ込む。
むぐうぐっ、呻いている那智の舌を指で挟んで、「那智は嘘を付いたし」俺はニヤリ笑う。
「この舌切るくれぇの罰はするかも。
嘘付いたら針千本飲ますって言うだろ?
けど針だと可哀想だから、舌をちょん切るくれぇにしてやる」
まあ、舌を切られても死なないだろうしな。
舌を噛み切って死ぬ、信憑性はあるみたいだがありゃ嘘だ。
舌を切られてもそうは死なない。
ショック死するか、切った残骸が喉に詰まって窒息死するか、出血大量で死ぬか。
那智は死なないだろうけどな。
俺が死なせないし?
ただ舌が無くなったら味が分からなくなるだろうな。
大好きな甘味も何もかも。
「兄さまに嘘を付くってのはワルイコトだ。それくれぇしねぇとな」
意地悪くいじわるく那智に言って口内を掻き回してやる。
あ、なんだろう。
こうして嬲るのがちょい楽しい。
今までそんなこと無かったのに。
口内掻き回したり、言葉で嬲ったり、その見え隠れする鎖骨に舌這わせたいなんて思っていたりいなかったり。
さっきまでその肌に噛み付いてた時には…、こんな気持ち、一切無かったのに。
那智が俺と同じ気持ちに達したんだって気持ちが満たされ、安堵感が包み込んだ瞬間、気持ちが疼いた。
まさか興奮してるのか? 俺。
それに泣き顔がまた嗜虐心を煽…、まて泣き顔?



