ううん、実は全部が夢で、目が覚めればお母さんがいる家にいたり。
そうだとすれば、おれ、今度こそ立ち直れない。
独りの怖さを知ってしまったからこそ…、もう立ち直ることはできないと思う。
「那智、もっかいお願いしたいことがあるんだ。―…俺の、なってくれねぇか? 全部兄さまにくれ」
おれは零れんばかりに目を見開いた。
まだ兄さまの顔を見る勇気はまだない。
「俺にとって那智、大切な家族だから…、誰にも取られたくないんだ」
キスしてもドキドキしねぇところが惜しいよな。
ドキドキすりゃ家族以上の関係になれるのに…、平然と躊躇いも無しにできる俺はまだてめぇを家族としか思えてないんだろうな。
いや別に恋人って名乗ってもいいけど、結局は一緒だろうし。
でもな那智。
てめぇが誰かに触れられてるのを見て、誰かに触れられるくれぇなら俺が抱くって思っちまった。
それってやっぱ嫉妬だよな。
今まで俺が那智の傍に居たのに、なんで他人が簡単に触れてるんだ…って…、居場所を取られる錯覚に陥った。
醜い嫉妬だよな。
「今、那智が此処で飛び下りるっつーなら、俺も一緒に飛び下りる。
ひとりになりたくねぇから。
那智の居ない世界、俺はイラナイから。
たった一人の兄弟を喪うくれぇなら俺も一緒に死ぬ」
―――…それじゃあ意味が無いじゃないか。
おれは兄さまの望むことをしようって、兄さまが幸せになるなら消えようとしてるのに、一緒に消えるなんてしたらプラマイゼロ。意味が無いじゃないか。
ようやく振り返る勇気を掴んだおれは、首だけ動かして大好きな兄さまを見つめる。
兄さま、泣きそうな顔をしてた。
おれと同じ顔をしてた。
なかなか声が出ない。
だけど震える喉を叱咤しながらおれは口にするんだ。



