(旧)ふたりぼっち兄弟【BL寄り】

身を乗り出しても、結局怖じる気持ちだけがおれを支配、体が硬直する。

嗚呼、絶望的。

もうあの頃に戻れないって知ってるのに、おれは兄さまの弟を名乗る資格もないのに、どうして加害者のおれが馬鹿みたいに泣いてるんだろう。

泣くなんてムシが良過ぎるじゃないか。


泣ける余裕があるなら、とっとと「そんなに身を乗り出してると、落ちるぞ」


後ろから聞こえてきた荒い息遣い、同時に後ろからじんわり侵食してくる温もり、大好きな優しさ。

上体を引き戻してくるその相手は微動している愚者の体を抱き込んできた。

意外と体は全体的にガクガク震えていようだ。

抱き込まれておれは自身の状態に気付いた。


「捕まえた」


もう逃がさない、放さない、放してやらない、聞こえてくる声は冷え切った体に癒しと温もりをくれる。

振り払わなきゃいけないって分かってるのに、おれは甘んじてそれを貪っていた。体全体で兄さまの温もりと優しさを貪っていた。おれの馬鹿。


「那智、傷付けてごめんな」


どうしてっ…、傷付けて裏切ったのはおれなのに。

おれはどうしても気持ちを受け取れなかった。
身を捩って腕から抜け出そうとする。


そしたら兄さま、腕の力を強くしてきた。


「聞いてくれ」


懇願が鼓膜を振動、瞬間片手がおれの視界を覆った。
 
真っ暗になる視界。
でも完全に暗いわけじゃなくて…、指の隙間から夜景が零れてくる。

通過する車達のライトが遮られた視界の隙間から見え隠れしていた。


「那智は汚くねぇ。悪い子でもねぇ。イラナイなんて嘘だ。
こんなにも那智を追い詰める気、無かったんだ。

悪い、傷付けるって分かってたのに…、頭に血がのぼってて」


あんなに暴力振らないって約束したのに、てめぇにまた暴力振るっちまった。

家に帰らなかったのは、その時はまだ頭に血がのぼってて、今帰ると那智を傷付けると思ったからだ。