(旧)ふたりぼっち兄弟【BL寄り】

ネオンがギラギラと装飾されてる街道を、おれは只管に走る。

「那智!」焦燥を含む声が聞こえたけど、一度だって止まらない。止まれない。走らないといけない。


どうしておれは兄さまから逃げるんだろう?

……傍に居られないは勿論だけど、これ以上嫌われたくないっての一理あるんだと思う。


会いたいって思ってた一方で、こんなにも逃げるなんて…、なんて我が儘なんだろう。おれ。


おれは足が縺れながらも懸命に走った。走り続けた。


息が切れるまで、息が切れても、ずっとずっとずっと。


人生で初めて全力疾走を経験した。

こんなにも全力で走る日が来るなんてっ…、しかも追い駆けられる相手が大好きな人だなんて皮肉だ。

雑踏の多い街道を走って、歩道橋を駆け上る。

のぼって歩道橋を渡ってる最中、限界を越えた足が縺れて転倒。大きく息を切らしながら上体を起こしたおれは、視界が涙の膜で揺れていることに気付く。


瞬き、伝い落ちる涙、自分に絶望するおれ。

柵の向こうから垣間見える遠い道路と走り去る自動車。


臆病風に今度は吹かれない…。


おれはゆっくりと立ち上がって手摺を掴むと下を覗き込む。

蟻の行列が早回しされたように、通り過ぎていく車達。手摺を握り締める手が震えてきた。


兄さまがおれをイラナイって言ったなら、おれはもうっ…。


おれの世界の中心は兄さまだ。


いつもおれを守ってくれた、優しい兄さま。

そんな兄さまを、汚いおれはっ…、裏切って、嫌われて当然でっ…、好きって言う資格もなければっ、傍にいる資格っも…兄さまを困らせる子なんてイラナイんだ。


分かってる、分かってるじゃないか。

決めていたじゃないか…。


兄さまがおれを不要としたら、黙って消えようって…、兄さまの幸せが一番だって、いつも言い聞かせてたじゃないか。

なのに、どうして、おれは畏怖の念に駆られてるんだろうっ。

ガクガクと足が震えてくるし、死にたくないって思う往生際の悪いおれもいる。


おれ、なんて無様なんだろう。