触れるだけのキスをした後、すっかり大人しくなったおれを解放した兄さまは、「もういいから」怒っていないことを告げてくる。
おれを落ち着かせるために背中を叩いて、何度も怒っていないことをおれに伝えてくる。
寧ろ謝られた。
なんで謝られるのか分からない。おれは謝罪を拒否した。
兄さまは優しいから、愚者を簡単に赦せるんだ。
本当は赦しちゃ駄目なんだ。
だって、おれは汚いし、悪い子だし、イラナイ子だし、何より兄さまを悲しませて裏切った。
あれだけ兄さまが他人に気を許すなって言っていたのにっ、お願いしてたのにっ、教えられてたのに。
おれは兄さまの言葉に一々力なくかぶりを振って、振って、振って、余っていた力を瞬間的に発揮。
助けに来てくれた兄さまを突き飛ばして、腕から抜け出した。
「那智っ…」
よろめく兄さまに、おれは馬鹿みたいに謝って後退する。
暗い路地裏で兄さまがどんな表情をしているのかは判断し辛い。
「駄目です…、おれ、悪い子だから…、汚い…からっ…、そばっ、駄目なんですっ…ごめんなさいっ」
「那智っ、あ、待て!」
生まれて初めておれは兄さまから、自分の意思で逃げた。
直ぐに捕まることも分かってるけど、足の速さは歴然だけど、でも逃げられずにはいられなかった。
傍にいたいけど…、兄さまの望みに何一つ応えられないおれなんて、おれなんてっ。
路地裏を飛び出したおれは、さっきのバス停まで戻った。
いや戻ろうとした。
けどやっぱり兄さまに捕まって見事に揉み合い。
「落ち着け!」兄さまの大好きな手に、「離して下さい!」おれは馬鹿みたいに拒絶した。
どうにか手を振り切ってバス停向こうに走る。
敢えて、人ごみの多い繁華街に向かって走った。人ごみが多ければおれの小さな体躯は紛れやすいと思ったから。
おれを落ち着かせるために背中を叩いて、何度も怒っていないことをおれに伝えてくる。
寧ろ謝られた。
なんで謝られるのか分からない。おれは謝罪を拒否した。
兄さまは優しいから、愚者を簡単に赦せるんだ。
本当は赦しちゃ駄目なんだ。
だって、おれは汚いし、悪い子だし、イラナイ子だし、何より兄さまを悲しませて裏切った。
あれだけ兄さまが他人に気を許すなって言っていたのにっ、お願いしてたのにっ、教えられてたのに。
おれは兄さまの言葉に一々力なくかぶりを振って、振って、振って、余っていた力を瞬間的に発揮。
助けに来てくれた兄さまを突き飛ばして、腕から抜け出した。
「那智っ…」
よろめく兄さまに、おれは馬鹿みたいに謝って後退する。
暗い路地裏で兄さまがどんな表情をしているのかは判断し辛い。
「駄目です…、おれ、悪い子だから…、汚い…からっ…、そばっ、駄目なんですっ…ごめんなさいっ」
「那智っ、あ、待て!」
生まれて初めておれは兄さまから、自分の意思で逃げた。
直ぐに捕まることも分かってるけど、足の速さは歴然だけど、でも逃げられずにはいられなかった。
傍にいたいけど…、兄さまの望みに何一つ応えられないおれなんて、おれなんてっ。
路地裏を飛び出したおれは、さっきのバス停まで戻った。
いや戻ろうとした。
けどやっぱり兄さまに捕まって見事に揉み合い。
「落ち着け!」兄さまの大好きな手に、「離して下さい!」おれは馬鹿みたいに拒絶した。
どうにか手を振り切ってバス停向こうに走る。
敢えて、人ごみの多い繁華街に向かって走った。人ごみが多ければおれの小さな体躯は紛れやすいと思ったから。



